六国五味(りっこくごみ)とは?
Rikkoku-gomi / Six classifications and five tastes of incense wood / Rikkoku-gomi / 概念
別名:木所
30秒でわかる六国五味
六国五味は、香道で香木を聞き分け、その特徴を表現するための伝統的な分類体系です。六国は伽羅・羅国・真南蛮・真那賀・佐曽羅・寸門多羅の六種、五味は甘・酸・辛・苦・鹹を指します。16世紀には前段階となる木所分類が見られ、17世紀頃に現在につながる体系が整いました。 文化庁
ひとことで言うと
六国五味とは、香道で香木を六種に分類し、その香りの特徴を甘・酸・辛・苦・鹹の五つの味覚表現で捉える、日本独自の伝統的な香木分類体系です。
六国五味の要点
- 六国五味は、香道における香木の伝統的な分類・表現体系です。
- 六国は伽羅・羅国・真南蛮・真那賀・佐曽羅・寸門多羅の六種です。
- 五味は甘・酸・辛・苦・鹹の五つです。
- 五味は実際の味ではなく、香りの印象を味覚表現に置き換えたものです。
- 一つの香木が必ず一つの味だけを持つわけではありません。
- 分類や五味の捉え方には流派・伝承による違いがあります。
- 16世紀には前段階となる木所分類が存在しました。
- 現在につながる六国五味は17世紀頃までに整ったとされています。
意味・定義
六国五味とは、香道で香木の性質を捉え、香りを聞き分けるために用いられてきた伝統的な分類・表現体系です。「六国」は伽羅・羅国・真南蛮・真那賀・佐曽羅・寸門多羅の六種、「五味」は甘・酸・辛・苦・鹹の五つの味覚表現を指します。
香道における六国五味
六国五味とは、香道で香木を六種に分類し、その香りの特徴を五つの味覚表現によって捉える伝統的な分類法です。香木を聞き分け、特徴を共有・伝承するための基準として用いられてきました。
六国五味は、日本の香道において香木の特徴を分類し、その香りを捉えるために発達した伝統的な体系です。文化庁の調査では、香道において香りを聞き分ける基準とされるものとして六国五味が紹介されています。六国には、伽羅・羅国・真南蛮・真那賀・佐曽羅・寸門多羅の六種が挙げられ、香りの特色は甘・酸・辛・苦・鹹という五つの味覚表現で表されます。 文化庁 六国の分類は、現代植物学や化学分析による分類とは性格が異なります。香木を実際に聞いた経験にもとづき、その香りや性質を感覚的・伝統的に分類する文化的な体系です。山田松香木店も、六国の概念はもともと産地を示すものとされていた一方、後には香りの性質による体感的な分類として伝承されてきたと説明しています。 株式会社 山田松香木店|江戸時代から続く京都の老舗香木専門店 六国は、伽羅、羅国、真南蛮、真那賀、佐曽羅、寸門多羅の六つです。公益財団法人お香の会でも、これらを香道で用いる香木の六分類として紹介しています。 公益財団法人 お香の会 一方の五味は、香りを「甘い」「酸っぱい」「辛い」「苦い」「塩辛い」といった味覚の言葉に置き換えて表現する方法です。これは香りそのものに実際の味があるという意味ではなく、嗅覚で感じる印象を、人に共有しやすい味覚表現へ置き換えたものです。文化庁の資料でも、甘・酸・辛・苦・鹹の五つが挙げられています。 文化庁 重要なのは、一つの香木が必ず一つの味だけに対応するわけではないことです。実際には複数の味の要素を兼ね、その強弱や組み合わせによって香木の個性を捉えます。香道に関する解説でも、五味の表現には流派や伝承による差異があることが示されています。 コトバンク また、六国五味の分類は一度に完成したわけではありません。文化庁の調査によると、16世紀初めにはすでに香木を複数の「木所」に分類する考え方があり、1573年成立の『隆勝香之記』には、70種の名香を伽羅・新伽羅・羅国・真南蛮・真那賀の五つに分類した記述が見られます。現在につながる六国五味の体系は、17世紀半ばまでに整ったとされています。 文化庁 六国五味は、香木の科学的な鑑定基準というより、香りを聞き分け、その個性を言葉にし、次の世代へ伝えるために育まれた日本独自の香文化の知恵と考えるのが適切です。
使用場面
香道、聞香、香木鑑賞、香木分類、名香、香席、香文化史などで用いられます。
用例
「香木を六国五味によって捉える」 「五味を手がかりに香りの特徴を聞き分ける」 「伽羅は六国の一つとして扱われる」
注意事項
六国五味は、現代植物学や化学分析による分類体系ではありません。また、「六国」という名称を現在の国名や産地にそのまま一対一対応させるのも避けた方が安全です。歴史的には産地との関係を示すとされてきましたが、現在は香りや性質を聞き分ける伝統的・経験的分類として理解することが重要です。さらに、各六国にどの五味を対応させるか、香りをどのように表現するかには流派や伝承による違いがあります。
ジャンル
歴史・文化背景
歴史・由来
六国五味の成立は、日本で香木そのものの香りを聞き分ける文化が高度化していった流れと深く関係しています。香道が形成される以前から、名香には銘が付けられ、それぞれの香木の違いが意識されていました。 文化庁の香道調査では、香木を分類判定する「木所」の考え方は16世紀初めには生じていたとされています。1573年に建部隆勝が著した『隆勝香之記』では、70種の名香が伽羅・新伽羅・羅国・真南蛮・真那賀の五つの木所に分類されています。これは現在の六国五味に至る前段階を示す重要な資料です。 文化庁 その後、分類体系が整理され、伽羅・羅国・真南蛮・真那賀・佐曽羅・寸門多羅という六国と、甘・酸・辛・苦・鹹の五味を組み合わせる現在につながる体系が成立していきました。文化庁資料では、この分類法は17世紀初め頃までには定まり、別の調査箇所では17世紀半ばには現在につながる体系が確立したとされています。
成立時期
前段階となる木所分類は16世紀初めには確認され、現在につながる六国五味の体系は17世紀前半から半ば頃までに成立したと考えられます。
文化的背景
六国五味が興味深いのは、本来言葉にしにくい「香り」を、分類と味覚表現によって共有可能なものにした点です。 香りは目で見ることも、形として保存することもできません。そのため香道では、香木の違いを身体感覚によって覚え、言葉によって伝える必要がありました。六国は香木の大きな性質を捉える枠組み、五味は香りの細かな印象を表現する言葉として機能してきました。 つまり六国五味は、単なる分類表というより、香木を聞き分けるための「共通言語」に近い役割を果たしてきたと考えられます。
現代での使われ方
現在でも六国五味は、香道や香木鑑賞を学ぶ際の重要な基礎概念として用いられています。文化庁の調査でも、現在の香道において香りを聞き分ける基準として紹介されています。 文化庁 ただし、現在では香木の植物学的分類や香気成分の化学分析も進んでいるため、六国五味は科学分類と競合するものではなく、日本の香道が育んだ伝統的・感覚的な分類体系として理解するのが適切です。
地域との関係
六国の名称には、歴史的に産地や交易地との関係があると説明されてきたものがあります。しかし、現在の国家・地域区分と単純に対応させることはできません。香木は南アジアから東南アジアの広い地域から日本にもたらされ、長い交易と鑑賞の歴史の中で分類されてきました。 公益財団法人 お香の会
関連用語
- 下位語
- 伽羅(きゃら)六国を構成する六分類の一つで、香道において特に珍重されてきました。
もっと詳しく知る

CULTURE GUIDE文化を知る
香道とは?初心者にもわかる「香りを聞く」日本文化|歴史・作法・楽しみ方
香道では、香りを「嗅ぐ」のではなく「聞く」といいます。なぜ香りを聞くのでしょうか。香道は、沈香などの香木を一定の作法で焚き、その香りを鑑賞する日本独自の伝統文化です。本記事では、香道の歴史、聞香や組香、香木、基本的な作法、初心者の楽しみ方まで、初めての方にもわかりやすく紹介します。

CULTURE GUIDE文化を知る
香りに名を与える——蘭奢待と名香のことば
目に見えず、ほどなく消える香りを、人はどのように記憶してきたのでしょうか。正倉院の黄熟香「蘭奢待」に隠された「東大寺」の三文字を入口に、香木の名称と銘、織田信長による切り取り、香合せ、組香へと続く日本独自の「香りと言葉」の文化をたどります。
よくある質問
- Q.六国五味とは何ですか?
- A.六国五味とは、香道で香木を分類し、その香りの特徴を表現するための伝統的な体系です。香木を六国に分類し、香りを甘・酸・辛・苦・鹹の五味で捉えます。
- Q.六国には何がありますか?
- A.六国は、伽羅・羅国・真南蛮・真那賀・佐曽羅・寸門多羅の六種です。香道では、これらを香木の大きな分類として用いてきました。
- Q.五味とは何ですか?
- A.五味とは、香りの特色を甘・酸・辛・苦・鹹という五つの味覚表現によって捉える方法です。香木を実際に味わうという意味ではなく、香りの印象を味覚の言葉に置き換えて表現します。
- Q.一つの香木には一つの味だけがありますか?
- A.いいえ。香木は複数の味の特徴をあわせ持つことがあり、その強弱や組み合わせによって香りの個性を捉えます。また、五味の表現には流派や伝承による差異もあります。
- Q.六国は香木の産地を表しているのですか?
- A.歴史的には産地や地域との関係を示す名称と説明されてきましたが、現在の国や産地と単純に一対一対応させるのは適切ではありません。香道では、香りや性質を聞き分ける伝統的な分類として理解することが重要です。
- Q.六国五味は科学的な分類ですか?
- A.現代植物学や化学分析による分類ではありません。香木を実際に聞いた感覚と長い伝承にもとづいて整理された、香道独自の経験的・文化的な分類体系です。
- Q.六国五味はいつ頃成立したのですか?
- A.前段階となる香木の木所分類は16世紀初めには確認され、1573年の『隆勝香之記』にも複数の木所が記されています。現在につながる六国五味の体系は、17世紀前半から半ば頃までに整ったとされています。
- Q.伽羅は六国五味とどう関係しますか?
- A.伽羅は六国を構成する六分類の一つです。日本の香道では特に珍重されてきた香木で、六国五味の体系の中でも重要な位置を占めます。
参考文献・出典
用語全体の参考文献
生活文化調査研究事業(香道)報告書・本調査研究事業のまとめ
文化庁
官公庁・参照日:2026年10月10日
生活文化調査研究事業(香道)報告書 ― 香道の形成
文化庁
官公庁・参照日:2026年10月10日
香を学ぶ
公益財団法人 お香の会
業界団体・参照日:2026年10月10日
香木について
株式会社 山田松香木店
Webサイト・参照日:2026年10月10日